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scriniarius Togawanus

復習がてら古典作品の対訳を書くだけです。

『ギリシア語入門』(田中美知太郎・松平千秋):練習問題の解答案

古典ギリシア語を最初から学習する上では,『ギリシア語入門 新装版』(田中美知太郎・松平千秋)をはじめに1周するのが(結構前から)セオリーのようです。

僕も授業で購入して取り組みましたが,非常にわかりやすく,安定して安価に入手できる入門書ですが,一点練習問題の解答がないのに困りました(まあ独習書というよりは教科書だからなんでしょうが...ちなみにネットで探したらあるにはあったのですが,気息記号やアクセント記号がないのと,入力ミスがちょくちょくありました)。

久しぶりに解き直してみることにし(ほとんど吹っ飛んでしまいました),せっかくですので解答を打ち込んで上げてみることにしました。全部終わるのはいつになるかわかりませんが,少しずつ増やしていきます。(間違いが多いと思いますのであまり信用なさらぬように...;見つけたら教えて下さい)→以下のログをご覧になるとわかりますが,セルフチェックでも恐ろしいまでのミスが見つかっています…

 

 

別にプログラムとかじゃないんで大丈夫だと思いますが一応スキャンとかかけておくことをおすすめします。

https://1drv.ms/b/s!AmdAVvA0ZcISgtgvKiUn0-W6Ysepsw

 

(編集ログ)

2017年4月25日:講読の授業が忙しくなったので一旦中断します...

2017年3月10日:練習問題30,31(第16課)ならびに§163(第17課)を追加しました。

2017年3月9日:練習問題28,29(第15課)を追加しました。果たして終わるのでしょうか。

2017年3月1日:練習問題26,27(第14課)を追加しました。

2017年2月27日:動詞のアクセントの後退性をすっかり忘れてました。一通り直しましたけどまだある気がします。練習問題24,25(第13課)を追加しました。

2017年2月23日:練習問題20~23(第11, 12課)を追加しました。注意書きを加筆しました。

2017年2月22日:練習問題18,19(第10課)を追加しました。注意書きを加筆しました。練習問題15-3,「詩人のποιητοῦ」が何故か「市民のπολῖτου」になってたので直しました;15-4 "πολῑτῶν εὐεργέτᾱς"は定冠詞を取るべきな気がしたので外したのと,スペルミスを直しました;17-2 "θύρᾱν"のアクセント位置がおかしかったので直しました;17-3 "ἡσυχίᾱν"に余計な曲アクセントがあったので削除し,"ἦγον"が誤って鋭アクセントになっていたので直しました。

2017年2月21日:院試に受かったので再開します。とりあえず今日は訂正だけ;練習問題11-4で,プロクリティック"ἐκ"に誤って鋭アクセントを付けていたのと,"πέμψει"に鋭アクセントを付け忘れていたこと,13-5で"παρὰ"の重アクセントを鋭アクセントにしてしまっていたのを修正しました。

2016年10月21日現在:ちゃんと生きてます。が、卒論と院試でギリシア語に時間が割けなくなりました…続きは2月後半までお待ちください…

2016年8月5日:練習問題14~17(第8,9課)を追加。注意書きを修正。

2016年8月2日:練習問題12~13(第7課)を追加;練習問題5(3)を疑問形にしていなかったのを訂正し,(4)の"?"を";"にする

2016年7月31日:練習問題4~11(第3~6課)まで作成

Alcibiades (Chap. 9) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium"

At Alcibiades, victis Atheniensibus non satis tuta eadem loca sibi arbitrans, penitus in Thraeciam se supra Propontidem abdidit, sperans ibi facillime suam fortunam occuli posse.

それに対してアルキビアデスは,アテナイ人たちが敗北したことによって同じ場所が自分にとって十分には安全でないと判断し,プロポンティスを越えてトラキア内地へと逃れた(そこに彼の財産を隠されて持つことが最も容易だと期待してのことである)。

 

Falso.

誤りであった。

 

Nam Thraeces, postquam eum cum magna pecunia venisse senserunt, insidias fecerunt;

なぜならば,トラキア人が,アルキビアデスが膨大な財産とともに来たことに気づくと,待ち伏せを行ったからだ;

 

qui ea, quae apportarat, abstulerunt, ipsum capere non potuerunt.

彼らは彼が携えていたものを奪い去り,【しかし】彼自身を捕らえることはできなかった。

 

Ille cernens nullum locum sibi tutum in Graecia propter potentiam Lacedaemoniorum, ad Pharnabazum in Asiam transiit;

彼の人【アルキビアデス】は,ラケダイモン人たちの支配権故に,ギリシアにおいて彼にとっての安全な場所はないと判断し,パルナバズスの元へ小アジアへと渡った;

 

quem quidem adeo sua cepit humanitate, ut eum nemo in amicitia antecederet.

アルキビアデスはこの人をその人間性を持って魅了し,誰も彼を友情において上まらないほどであった。

 

Namque ei Grynium dederat, in Phrygia castrum, ex quo quinquagena talenta vectigalis capiebat.

確かにパルナバズスは彼にフリュギアの城市グリュニウムを与え,そこから彼は貢納の50タレントゥムを得ていた。

 

 

Qua fortuna Alcibiades non erat contentus neque Athenas victas Lacedaemoniis servire poterat pati.

その境遇によってアルキビアデスは満足させられず,また,アテナイ人がラケダイモン人たちに勝利され隷属していることを許すことができなかった。

 

Itaque ad patriam liberandam omni ferebatur cogitatione.

それ故,彼は祖国が解放されるようなあらゆる思考に駆り立てられていた。

 

Sed videbat id sine rege Perse non posse fieri ideoque eum amicum sibi cupiebat adiungi neque dubitabat facile se consecuturum, si modo eius conveniundi habuisset potestatem.

しかしそれはペルシア王【+の助力】なしには実行されることができないのが明らかになり,それ故,そのことに対して友好的な彼【=王】が与されることを熱望し,そしてもし彼が会見される機会を持ちさえすれば,それ自体が容易に帰結されることを疑わなかった。

 

Nam Cyrum fratrem ei bellum clam parare Lacedaemoniis adiuvantibus sciebat:

というのも,王の弟のキュルスがラケダイモン人たちの助けによって密かに彼に対してに戦いを準備していることを知っていたからだ:

 

id si aperuisset, magnam se initurum gratiam videbat.

もしそのことを明らかにすれば,自身が多大な寵を得るあろうと彼は考えた。

 

 

戦後小アジアに逃れたアルキビアデスの件です。誰とでも友好的な関係を築ける人物とのことで,平穏に暮らそうと思えばいくらでもそうできる人だったのですね。ところが...

(ちなみにキュルスの反乱は失敗したそうです)

 

【参考文献】

Roebuck, R. (ed.) (1987) Nepos: Three Lives, Bristol Classical Press, p.23 sq. 

上村健二,山下太郎訳(1995)『英雄伝』,国文社,52-53頁

 

第1章

Alcibiades (Chap. 1) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

第2章

Alcibiades (Chap. 2) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

第3章

Alcibiades (Chap. 3) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

第4章

Alcibiades (Chap. 4) in Nepos "De Excellentibus Ducibus Exterarum Gentium" - scriniarius Togawanus

第5章

Alcibiades (Chap. 5) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

第6章

Alcibiades (Chap. 6) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

 

第7章

Alcibiades (Chap. 7) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

 

第8章

Alcibiades (Chap. 8) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

Alcibiades (Chap. 8) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium"

Nam cum apud Aegos flumen Philocles, praetor Atheniensium, classem constituisset suam neque longe abesset Lysander, praetor Lacedaemoniorum, qui in eo erat occupatus, ut bellum quam diutissime duceret, quod ipsis pecunia a rege suppeditabatur, contra Atheniensibus exhaustis praeter arma et navis nihil erat super, Alcibiades ad exercitum venit Atheniensium ibique praesente vulgo agere coepit:

一方,アテナイ人の総帥フィロクレスがアエゴス川の近くに彼の艦隊を駐屯させていた時,ラケダイモン人たちの総帥リュサンデルは,遠くは離れていないところにいて,自らにおいては王から資金を与えられていたが,逆にアテナイ人においては底をつき,武器と船を覗いて何も残っていなかったという理由で戦争をできる限り長く引き延ばすことに忙殺されており,アルキビアデスはアテナイ人の部隊を訪れ,そこで目下の兵士たちに対して訴え始めた:

 

si vellent, se coacturum Lysandrum dimicare aut pacem petere spondit;

アルキビアデスは,彼ら(兵士たち)が望むなら,戦うか或いは和平を要求するか,リュサンデル自身に対して何れかを強いることを【以下のようにして】約束した;

 

Lacedaemonios eo nolle classe confligere, quod pedestribus copiis plus quam navibus valerent:

「海軍においてよりも陸上の軍においてより力があるという理由で,ラケダイモン人たちは艦隊を以って戦うことを欲しない:

 

sibi autem esse facile Seuthem, regem Thraecum, deducere, ut eum terra depelleret;

だが,私にとってはリュサンデルを陸から追い出すためにトラキア人の王セルテスを導き入れることは容易である;

 

quo facto necessario aut classe conflicturum aut bellum compositurum.

それが為されることによって,彼らはやむなく艦隊を以って戦うか,戦争を調停するだろう。」と。

 

Id etsi vere dictum Philocles animadvertebat, tamen postulata facere noluit, quod sentiebat se Alcibiade recepto nullius momenti apud exercitum futurum et, si quid secundi evenisset, nullam in ea re suam partem fore, contra ea, si quid adversi accidisset, se unum eius delicti futurum reum.

フィロクレスはそのことが正しく述べられたことに気づいていたが,それにも関わらず,要求を実行することを望まなかった;というのも,アルキビアデスが受け入れられたら,自身においては軍隊における影響力を全くして失い,そしてもし何らかの好都合なことが起こっても,そのことに対してその一端を担うことは決してないだろうし,それと逆に何らかの不都合なことが起こると,自分一人でアルキビアデスの過失に対して責任があるだろうと自ら判断していたからだ。

 

Ab hoc discedens Alcibiades `Quoniam' inquit `victoriae patriae repugnas, illud moneo, ne iuxta hostem castra habeas nautica: periculum est enim, ne immodestia militum vestrorum occasio detur Lysandro vestri opprimendi exercitus'.

この人【=フィロクレス】の元を去りつつ,アルキビアデスは述べた;「君が祖国の勝利にこうしているのであるから,私は海軍の陣営を敵のすぐ知覚に留めおくことなかれと警告しておこう:なぜなら君たちの兵士たちの放縦によって,君たちの軍隊が屈服させられるであろう好機がリュサンデルに与えられる危険があるからだ。」

 

Neque ea res illum fefellit.

そしてその事態は彼を裏切らなかった。

 

Nam Lysander cum per speculatores comperisset vulgum Atheniensium in terram praedatum exisse navesque paene inanes relictas, tempus rei gerendae non dimisit eoque impetu bellum totum delevit.

すなわちリュサンデルは,アテナイ人の兵士たちが略奪するために地上に上がっていたことを,殆どからの船が残されているという確報を斥候を通じて受けると,実行されるべきことの時を逸せず,その襲撃によって戦争自体を全くして終わらせたのである。

 

 

最後更新したのいつだったっけな...

ペロポネソス戦争末期,アテナイの敗北のことが描かれています。ここでは嫉妬心に踊らされた将軍が,アテナイ随一の名将の助言を無視したため戦争に敗れたという文脈になってますね。トゥキュディデスとかの該当部分もいずれ読んでみたいです。

 

 

【参考文献】

Roebuck, R. (ed.) (1987) Nepos: Three Lives, Bristol Classical Press, p.22 sq. 

上村健二,山下太郎訳(1995)『英雄伝』,国文社,51-52頁

 

第1章

Alcibiades (Chap. 1) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

第2章

Alcibiades (Chap. 2) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

第3章

Alcibiades (Chap. 3) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

第4章

Alcibiades (Chap. 4) in Nepos "De Excellentibus Ducibus Exterarum Gentium" - scriniarius Togawanus

第5章

Alcibiades (Chap. 5) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

第6章

Alcibiades (Chap. 6) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

 

第7章

Alcibiades (Chap. 7) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

 

Alcibiades (Chap. 7) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium"

Haec Alcibiadi laetitia non nimis fuit diuturna.

このアルキビアデスの喜びは大して長期間のものではなかった。【→大して長続きしなかった】

 

Nam cum ei omnes essent honores decreti totaque res publica domi bellique tradita, ut unius arbitrio gereretur, et ipse postulasset, ut duo sibi collegae darentur, Thrasybulus et Adimantus, neque id negatum esset, classe in Asiam profectus, quod apud Cymen minus ex sententia rem gesserat, in invidiam recidit.

なぜならば,彼のためにあらゆる名誉が承認され,平時と戦時において全ての国事が彼一人の裁量によって行われるように託され,そして自身に2人の同僚-トゥラシュブルスとアディマントゥスが与えられるようにまさにその人が要求してそのことが拒否されなかった時,彼は艦隊を伴ってアシアへ出発し,【+しかし】キュメに於いて意図していたよりも少ない戦功を上げたという理由で,彼は再び憎悪へと落ちいった。

 

Nihil enim eum non efficere posse ducebant.

というのも,彼らは彼が遂行できないことは何もないと見なしていたからだ。

 

Ex quo fiebat, ut omnia minus prospere gesta culpae tribuerent, cum aut eum neglegenter aut malitiose fecisse loquerentur; sicut tum accidit.

そのようなことから,より不都合に生じさせられた全てのことを,人々は彼がぞんざいに,あるいは悪意を持って行動したと言いいながら【+彼の】過失に転嫁したということになり,この時もこのように生じたのである。

 

Nam corruptum a rege capere Cymen noluisse arguebant.

すなわち彼らは,彼が王【=ペルシア王】によって買収されたのでキュメを占領することを欲さなかったのだと非難したのだった。

 

Itaque huic maxime putamus malo fuisse nimiam opinionem ingenii atque virtutis.

それ故,この人にとって極めて悪かったのは,才能や加えて果断さの極端な期待であったと我々は見なすのである。

 

Timebatur enim non minus quam diligebatur, ne secunda fortuna magnisque opibus elatus tyrannidem concupisceret.

というのも,彼は愛されていたのに劣らず,幸運と多くの財産に驕って僭主政治を要求するのではないかと恐れられていたのである。

 

Quibus rebus factum est, ut absenti magistratum abrogarent et alium in eius locum substituerent.

このことによって,人々が不在者【=アルキビアデス】に対して職権を剥奪し,他の者を彼の地位へ後代わりに置くということが為された。

 

Id ille ut audivit, domum reverti noluit et se Pactyen contulit ibique tria castella communiit, Ornos, Bisanthen, Neontichos, manuque collecta primus Graecae civitatis in Thraeciam introiit, gloriosius existimans barbarum praeda locupletari quam Graiorum.

彼の人はそのことを耳にするや否や,本国へ引き返すことを欲さず,パクトゥエーへ向かい,そこでオルニ,ビザンテ,ネオンティコスの3つの砦を固め,ギリシア人よりも夷狄の略奪品を以って富まされることをより名誉あるものと判断し,集められた手勢によって,ギリシアの市民で初めてトラキアの間に入った【→侵入した】。

 

Qua ex re creverat cum fama tum opibus magnamque amicitiam sibi cum quibusdam regibus Thraeciae pepererat.

このおかげで,彼は名声と同様に財産においても力をつけ,トラキアの数名の王たちとの多大なる同盟関係を獲得したのであった。

 

Neque tamen a caritate patriae potuit recedere.

しかし彼は祖国に対しての愛情を捨てることができなかった。

 

 

ネポス『英雄伝』からアルキビアデス伝の第7章です。またしても雲行きが怪しくなっています。キュメでは海戦で敗北したようですが,クセノフォン(Hellenica, 1.5)によるとさほど大したものではなかったようで(しかも彼はその戦闘には不在でした),完全に全能者としての評判が独り歩きしてしまった結果でしょうか...

 

 

【参考文献】

Roebuck, R. (ed.) (1987) Nepos: Three Lives, Bristol Classical Press, p.21 sq. 

上村健二,山下太郎訳(1995)『英雄伝』,国文社,50-51頁

 

第1章

Alcibiades (Chap. 1) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

第2章

Alcibiades (Chap. 2) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

第3章

Alcibiades (Chap. 3) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

第4章

Alcibiades (Chap. 4) in Nepos "De Excellentibus Ducibus Exterarum Gentium" - scriniarius Togawanus

第5章

Alcibiades (Chap. 5) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

第6章

Alcibiades (Chap. 6) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

Alcibiades (Chap. 6) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium"

His cum obviam universa civitas in Piraeum descendisset, tanta fuit omnium exspectatio visendi Alcibiadis, ut ad eius triremem vulgus conflueret, proinde ac si solus advenisset.

すべての市民が彼の元へ向かってピラエウス港へと下りた時,すべての人々のこれほどまでの期待はアルキビアデスが見に来られることであり,それ故民衆はあたかも彼一人が到着したかのように,彼の三段櫂船へ向かって殺到していた。

 

sic enim populo erat persuasum, et adversas superiores et praesentes secundas res accidisse eius opera.

なぜならば人々においては以下のように説得されたからである,【+すなわち】過去の不運も,現在の順境も,彼の働きから生じたことであると。

 

itaque et Siciliae amissum et Lacedaemoniorum victorias culpae suae tribuebant, quod talem virum e civitate expulissent.

したがって彼らはシキリアの損失もラケダイモン人たちの勝利も,そのような男を国から追い出したという理由で,その【=市民たちの】罪に帰していた。

 

neque id sine causa arbitrari videbantur.

それが理由なしに信じられるとは思われていなかった。

 

nam postquam exercitui praeesse coeperat, neque terra neque mari hostes pares esse potuerant.

なぜならば,アルキビアデスが軍隊の指揮をすることが始まって以来,陸でも海でも敵は互角であることができなかったからだ。

 

Hic ut e navi egressus est, quamquam Theramenes et Thrasybulus eisdem rebus praefuerant simulque venerant in Piraeum, tamen unum omnes illum prosequebantur, et, id quod numquam antea usu venerat nisi Olympiae victoribus, coronis aureis aeniisque vulgo donabatur.

この人【=アルキビアデス】が船から降りるや否や,テラメネスとトゥラシュブルスは同じもの【=戦い】を指揮し,共にピラエウス港に来たのであるが,それにもかかわらず,すべての人々は彼の人に随行しており,そして,そのこと【=冠が贈られたこと】はオリンピアの勝利者以外では,より以前には決して起こらなかったことだが,金と銅の冠を持って公然と贈られていた。

(写本においては"coronis laureis taeneiisque",すなわち「月桂樹と帯の冠」です;なんとなくこちらのほうがいい気がします。)

 

ille lacrumans talem benevolentiam civium suorum accipiebat reminiscens pristini temporis acerbitatem.

かつての辛辣を想起しつつも,彼の人は泣いて市民たちのこのような行為を受け取っていた。

 

Postquam astu venit, contione advocata sic verba fecit, ut nemo tam ferus fuerit, quin eius casui illacrumarit inimicumque iis se ostenderit, quorum opera patria pulsus fuerat, proinde ac si alius populus, non ille ipse, qui tum flebat, eum sacrilegii damnasset.

彼はアストゥについた後,民会に呼ばれ,次のように陳述を始めた;すると,彼の不幸に涙せず,人々-その働きによって彼が祖国から退去させられた-に敵愾心を露わにしないほど残酷なものは誰もおらず,【+そしてそれは】その時泣いてた人自身ではなく,あたかも他の人々が,彼に宗教冒涜の罪を帰したかのようであった。

 

restituta ergo huic sunt publice bona, eidemque illi Eumolpidae sacerdotes rursus resacrare sunt coacti, qui eum devoverant, pilaeque illae, in quibus devotio fuerat scripta, in mare praecipitatae.

したがって国庫からこの者に財産が返還され,かの司祭ら,エウモルピダエは彼を呪っていたが,元通り呪いを解くよう強いられ,そして呪いが刻まれていたその柱は海の中へ沈められた。

 

ネポスによるアルキビアデス伝第6章です。英雄として迎えられた彼と,その名誉回復が記載されています。ただし,"haec Alcibiadi laetitia non nimis fuit diuturna."「このアルキビアデスの喜びは大して長続きしなかった」のであった...(7章へ続く)

 

どこかでネポスの『英雄伝』についてまとめて書きたいですが,いまいちブログ形式だとどう配置したらいいか悩みどころ。

 

【参考文献】

Roebuck, R. (ed.) (1987) Nepos: Three Lives, Bristol Classical Press, p.20 sq, 63sq. 

上村健二,山下太郎訳(1995)『英雄伝』,国文社,49-50頁

 

第1章

Alcibiades (Chap. 1) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

第2章

Alcibiades (Chap. 2) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

第3章

Alcibiades (Chap. 3) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

第4章

Alcibiades (Chap. 4) in Nepos "De Excellentibus Ducibus Exterarum Gentium" - scriniarius Togawanus

第5章

Alcibiades (Chap. 5) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

Alcibiades (Chap. 5) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium"

Neque vero his rebus tam amici Alcibiadi sunt facti quam timore ab eo alienati.

しかしラケダイモン人たちはこれらの行為【「利益」でもいいかも】のためにアルキビアデスに対しての友好が生じさせられたというよりはむしろ,彼に対する恐れによってそれらが手離された。

(his rebus:内容は第4章の終わりを参照)

(alienati:amici Alcibiadi suntが省略され,factiと対になっているとしました)

 

Nam cum acerrimi viri praestantem prudentiam in omnibus rebus cognoscerent, pertimuerunt, ne caritate patriae ductus aliquando ab ipsis descisceret et cum suis in gratiam rediret.

すなわち最も透徹な男【=アルキビアデス】の注目すべき【=卓越した】あらゆる物事についての叡智を彼らが知ると,彼が祖国への愛情に導かれていつしか彼ら自身の元を離れ,そして彼のものたち【→アテナイ人】と友情の中に戻る【→和解する】のではないかと彼らは恐れたのである。

 

Itaque tempus eius interficiundi quaerere instituerunt.

それ故に,彼らは彼を殺す時【→好機】を伺い始めた。

 

Id Alcibiades diutius celari non potuit.

このことはアルキビアデスに対して,より長く隠されることはできなかった。

 

Erat enim ea sagacitate, ut decipi non posset, praesertim cum animum attendisset ad cavendum.

というのも,彼は直感力を持つ類の人であり,したがって,とりわけ彼が意識を警戒へと向けた時には,騙されることはできなかったのである。

 

Itaque ad Tissaphernem, praefectum regis Darii, se contulit.

それ故彼はダリウス王の地方長官,ティッサフェルネスの元へと赴いた。

 

Cuius cum in intimam amicitiam pervenisset et Atheniensium male gestis in Sicilia rebus opes senescere, contra Lacedaemoniorum crescere videret, initio cum Pisandro praetore, qui apud Samum exercitum habebat, per internuntios colloquitur et de reditu suo facit mentionem.

その者と最も親密な友情に達した後,また,シチリアにおけるアテナイ人の悪しき行動【=失敗】により力が弱まっていること,一方でラケダイモン人たちが強まっていることを見ると,彼はまずサムス島で軍隊を有していたピサンドロスと使者を通じて連絡を取り,彼の帰還【→アルキビアデスのアテナイへの帰還】についての可能性を示唆した。

(male gestis:完了受動分詞で訳すと「悪しく行動されたことにより」ですが,少しまどろっこしくなったので,派生語?の名詞gestusで取りました)

 

Erat enim eodem, quo Alcibiades, sensu, populi potentiae non amicus et optimatium fautor.

 なぜならばピサンドロスはアルキビアデスが持つものと同じ意見であり,民衆の権力の味方でなく貴族の支持者であった。。

(enim, eodem, quo, sensu:全部「性質の奪格(~をもった)」でいいのかな...?)

(amicus, fautor:どちらも繰り返しとなるため省略されたeratの目的語としました)

 

Ab hoc destitutus primum per Thrasybulum, Lyci filium, ab exercitu recipitur praetorque fit apud Samum;

彼はこの人には見捨てられたが,テュコスの息子トゥラシュブルムによって初めて軍隊に迎え入れられ,そしてサムス島に於いて指揮官に任命された。

(fit:歴史的事実としての現在形,facioの受動形故に,主格2つをとって「任命された」となる)

 

post suffragante Theramene populi scito restituitur parique absens imperio praeficitur simul cum Thrasybulo et Theramene.

テラメネスの支持以後,人民の決定により地位が回復され,不在のままトイラシュブルスやテラメネスと同じ権限の指揮官に任じられた。

 

 

Horum in imperio tanta commutatio rerum facta est, ut Lacedaemonii, qui paulo ante victores viguerant, perterriti pacem peterent.

彼の指揮権の中で大きな事態の変化が為され,少し前は勝利者たちとして勢いがあったラケダイモン人たちは脅かされ,講和を求めていた。

 

Victi enim erant quinque proeliis terrestribus, tribus navalibus, in quibus ducentas naves triremes amiserant, quae captae in hostium venerant potestatem.

すなわち彼ら(ラケダイモン人たち)は5つの陸戦と3つの海戦で勝利され,海戦では200隻の三段櫂船を喪失し,それらは捕らえられて敵の支配に陥ったのであった。

 

Alcibiades simul cum collegis receperat Ioniam, Hellespontum, multas praeterea urbes Graecas, quae in ora sitae sunt Asiae, quarum expugnarant complures, in his Byzantium, neque minus multas consilio ad amicitiam adiunxerant, quod in captos clementia fuerant usi.

アルキビアデスは同僚たちとともに,イオニア,ヘレスポントゥス,加えてアシア【=小アジア】の海岸にあった多くのギリシア都市を取り戻した;多数の都市を攻略したが―その中にビュザンティウムがあった―捕らえられたものへ寛容さが為されるべしという賢察を持って,劣らず多くの都市を修好同盟へと加盟させた。

 

Ita praeda onusti, locupletato exercitu, maximis rebus gestis Athenas venerunt.

このようにして彼らは戦利品によって重くされ,富んだ軍隊で,最大の戦功を以って,アテナイに帰還した。

 

 

長かったです。

 

【参考文献】

Roebuck, R. (ed.) (1987) Nepos: Three Lives, Bristol Classical Press, p.19 sq. 

上村健二,山下太郎訳(1995)『英雄伝』,国文社,48-9頁

 

第1章

Alcibiades (Chap. 1) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

第2章

Alcibiades (Chap. 2) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

第3章

Alcibiades (Chap. 3) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

第4章

Alcibiades (Chap. 4) in Nepos "De Excellentibus Ducibus Exterarum Gentium" - scriniarius Togawanus

第6章

Alcibiades (Chap. 6) in Nepos "De excellentibus ducibus exterarum gentium" - scriniarius Togawanus

CIL V 606

同じく今日のゼミで扱われた墓碑銘です。

 

C. Hotilio C. f.

Flugioni

C. Hostilio C. f.

Nepoti f(ilio)

L. Mutillio L. l.

Nimphodoto f(ilio)

Hostilia C. l.

Provincia

v(iva) f(ecit).

 

C. = Gaius, L. = Lucius, f. = filius, l. = libertoですので、上から訳すと

 

ガイウスの息子ガイウス・ホティリウスのために

フルギオヌスのために

ガイウスの息子ガイウス・ホスティリウスのために

ネポスのために、息子のために

ルキウスの解放奴隷ルキウス・ムティッリウスのために

ニンフォドトゥスのために、息子のために

ガイウスの解放奴隷ホスティリアが

プロウィンキア

生きている者が成した

 

謎です。

 

まずローマ人の名がpraenomen(男性のみ)- nomen-status(C. f.とかC. l.とか)-cognomenになることを考えると、登場人物は

①ガイウスの息子ガイウス・ホスティリウス・フルギオヌス

②ガイウスの息子ガイウス・ホスティリウス・ネポス

③ルキウスの解放奴隷ルキウス・ムティッリウス・ニンフォドトゥス

④ガイウスの解放奴隷ホスティリア・プロウィンキア

の四人となります。

となるとNepotiやNimphodotoの後ろのf(ilio)は何だということになりますが、結論を先に言うとホスティリア・プロウィンキア(④)の息子ということらしいです。

ホスティリア・プロウィンキア(④)を解放したガイウスというのはガイウス・ホスティリウス・フルギオヌス(①)で、この二人が結婚し、生まれた息子がガイウス・ホスティリウス・ネポス(②)になるのだそうです。市民と解放奴隷の間に生まれた子は市民となるので、確かに辻褄はあります。

で、ルキウス・ムティッリウス・ニンフォドトゥス(③)は誰だということになると、ホスティリア・プロウィンキア(④)が解放奴隷になる以前にもうけた息子ということになり、彼は母親が解放される前だったので、奴隷身分となります。ルキウス・ムティッリウス・???さんが彼を解放したのち、同居したということなんでしょうか?

 

要点を言うと、

①が④を解放して結婚して②が生まれた。

③は④が解放される以前に生まれた子である(②③は異父兄弟)。

ということですね。

 

名前のつけ方だけでここまで推測できるのは面白いですが、ローマ人には名前のつけ方を改めていただきたかった次第です。(そもそも名前のヴァリエーションが少ないしね)

 

以上最初の墓碑銘を適宜補って全訳するとこんな感じでしょうか?

 

ガイウスの解放奴隷ホスティリア・プロウィンキアが存命中に建てた;

ガイウスの息子ガイウス・ホスティリウス・フルギオヌス、ガイウスの息子ガイウス・ホスティリウス・ネポス、そしてルキウスの解放奴隷ルキウス・ムティッリウス・ニンフォドトゥスのために。

 

お母さんだけ生き残ってしまった何かがあったんでしょうかね…